Webサービスと生体データ

diary

2009年11月号のweb designingに寄稿したアーティクル。


+Webサービスと生体データ
既存の実空間の状況はGPSの位置情報とともに集約され、API化され新たなサービスに再利用されていますが、生体データの共有が許容される日も近いと思います。
いずれ身体にセンサーが埋め込まれネットワークに接続されて、何を食べて、いつ寝ているか、どこでセックスをしているかというプライバシーに関わる情報も集積され、都市におけるエネルギー問題や貧困問題を改善するサービスに展開される日が来るかもしれません。NYのSean Montgomery氏はプロジェクトの参加者にセンサーを付けてもらい、心拍数と位置情報をサーバーに送って盛り上がっているクラブを見つけるというプロジェクトをスタートしています。新たにセンサーをクラブに取り付けなくても生体データと位置情報で状況が分かると言う面白い試みだと思います。いつの日か五官をデータ化し集約する事が出来れば、世界をより良くするための方法が見つかるかもしれません。笑顔のセンシングデータと位置情報を集約するだけでも、何が本当の幸せなのかを考え直すきっかけになるかもしれません。

+webサービスと個人データ
個人の生体データや生活に纏わるセンシングデータが有料になる可能性もあります。6年程前、IAMASの課題発表で現代音楽家の松本祐一君が、”どこでもドア”を作ると言っていて、それ自体は(確か)遠距離恋愛中の二人の家のドアが同期すると言うシンプルなアイディアだったのですが、「アイドルの家の状況を知る事が出来るサービスがあったらお金を払うよね」と盛り上がったのを今でも覚えています。実際にWebサービスとして始まったら面白くなりそうです。
その際、ユーザーが利用出来るデータは
「個人を特定出来ずプライバシーを侵害しない」
「著作権的に問題が無く再配布自由」
「解釈の幅が広く再利用の方法が特定されない」
すなわち、ユーザーの想像力によって本来価値の無いはずのデータを価値のあるものに昇華すると言うところがポイントになります。
「某アイドルの体、もしくは彼女の部屋にセンサーを付けてそれをAPI化してユーザーにコンテンツを作ってもらおう」と提案をした事があります(却下)。例えば、両腕に筋電センサーを埋め込んでセンシングデータをweb上で公開したら、CGを作る人もいれば、音楽を作る人もいるでしょう。ゲームの要素として使う人もいるでしょうし、細かく解析してロボットの手を動かす人も出てくるかもしれません。物好きなユーザー達がセンシングデータを使って自由勝手に想像し、色々な遊びを考えてくれるはずです。

同じ様な例では、(注4)Geminoidの生体情報(機体情報)を音に変換する試みを(注5)Ars Electronica Centerで行いました。Linzからtelnet経由でサーバから連続的に送られてくるデータを東京で受信しながら音作りをしていましたが、データは元々音に変換する事を想定されたものではないため生のままでは使えません。単純に音程や音量に代入するだけでは魅力的なアウトプットにはならないため、かなり恣意的に、自由にデータを加工しています。この自由度の高さがクリエイティビティを発揮出来る部分で単純なヴィジュアライズやソニフィケーションとは異なるところです。もちろん、Web上で簡単に拾う事が出来る株価や気象情報でもプログラム次第で魅力的な音を作る事は可能です。しかし、データが何なのかが重要でGeminoidの機体情報を使って音を作れるという部分がモチベーションになり想像が膨らむのです。
制作途中はデータを観ながら「あ、今首を回したな」とか「誰かに揺らされたかも」と想像してニヤニヤしていました。それと同時に、実際の生体データをサービスで扱う際には何を検討すべきかも見えてきました。
身体に埋め込まれセンサーのデータを共有して再利用するためにはセキュリティ、プライバシー、著作権の問題を解決する必要があります。実際の広告やサービスに落とし込むのはその後になるため、私やライゾマティクスの面々がデータを使用出来るのはまだまだ先になりそうです。とはいえ、アイディアは色々と出て来ているので、まずは自主プロジェクトとしてWebサービスに繋がる実験を始めようと考えています。


その後、http://twitter.com/#!/bodyhackers
っていうアカウントを作って睡眠時の眼球の動きやら生体関連データを呟く実験等をやってみる。
(呟き過ぎてウットオシがられて朝起きたらフォロワーが100人から10人くらいに、orz)

そしてMIT Media Labで生体センサーや低周波刺激装置に関するワークショップを照岡さんの指導の元
石橋さん、齋藤社長、原田克彦君a.k.a.ガッチャンと制作。
生体データの集合を使ってサウンドを作ったり、生体データをみんなでtweetするテスト等を行い
何となく手応えを得たので、ワークショップをパッケージ化して10都市くらいで実施。

受講生を巻き込んで色々と実験した結果、サービスよりも
コンテンツにしてみるのが先かなと思って
http://yakushimaruetsuko.com/ybh/
を制作。

そして次はやはり集合データかなーと思ったものの
インプラントはまだまだ先だし、センサーを常時付けるのは大変なので
普段使っているデバイスにセンサーを如何に仕込むか、ということを念頭に色々考えて
支援を申請して無事通ったのでこれから本格的に半年くらいかけて開発することに。
http://www.bunka.go.jp/ima/press_release/pdf/mediacreator_shien_110826.pdf

支援の面接で何となく話した事をメモ。

ここまで来るのに時間かかり過ぎた気も、、。。。
しかし生体データは面白いのでまだまだやめられない、、。

最近面白かった生体ネタ (via 照岡さん)
http://docomo-exhibition.jp/cj2011/pc/navigategirls/detail_07.html
http://www.minokonashi.co.jp/
http://and-r.jugem.jp/?eid=153